実践・女性精神医学-ライフサイクル・ホルモン・性差

著者・編者:油井邦雄・相良洋子・加茂登志子 編

判型・価格・発行年: B5判 380頁 8,000円 2005年

内容紹介:

実践・女性精神医学刊行によせて
天野恵子~(抜粋)

戦後5,60年の間に30年も延びた人生の中で,われわれは,WHO憲章がうたう健康な生活を手に入れただろうか? 
「健康とは,単に病気,あるいは虚弱でないというだけでなく,身体的,精神的,社会的に完全に良好な状態Well-beingである」と定義された健康を。人生の延長,男女共同参画社会の到来とともに,われわれがライフステージで抱える健康障害は多様なかたちをとるようになった。自分は健康と思っていた人が,検診で異常を指摘されることがある一方で,様々な症状を持ちながら,検査ではまったく問題なしとされる人も多数いる。
1999年に性差医療・医学(Gender-specific Medicine)を日本に紹介し,引き続き「性差に基づく医療」の実践の場として「女性外来」を立ち上げて以来, 女性外来を受診する3割から5割が精神的症状が優位な患者である。日本では,まだまだ精神科の門をくぐることには抵抗があるうえに,不本意ながら3分診療,薬物治療に追われている現状では,「初診に30分」「傾聴と説明」を看板とした女性外来は,精神的な問題を抱えた女性にとって,病院を訪れる敷居をぐっと低くしたといえる。
しかし,日常の診療を担当している精神科・心療内科以外を専門とする医師たちにとって,女性にターゲットを絞った精神科・心療内科のマニュアルやテキストがあればどんなに助かるだろうとの思いは非常に強いものがあった。
今回,油井,相良,加茂氏らによる「実践・女性精神医学-ライフサイクル・ホルモン・性差」が発刊されることとなり,早速手にとって読ませていただいたが,一人一人の執筆者が非常に力をこめて,新しい情報を判りやすく伝え,かつ,女性精神医学はどのようにあるべきかとのメッセージをも伝えていこうとしていることに感動を覚えた。精神疾患の中には性差が明瞭なものが少なくない。その性差が生物学的性によって生じるものもあれば,社会的な性差すなわちジェンダーの問題が背景にあるものもある。女性を診療する全ての医師に勧めたい一冊である。

●女性のメンタルヘルスに関するすべてを網羅する最新の知見を紹介
●関連施設・支援機関の連絡先など,すぐに臨床に役立つ資料満載

現代女性特有の社会文化的な葛藤やストレス,ライフイベント,ホルモン変動等を 背景にした症例48ケースを詳細に解説。
臨床に役立つ専門的な知識と技術,サ ービスの在り方,患者さんとのコミュニケーションの方法を解説した本邦初・ 女性精神医学実践テキスト!


目次:

総論 女性のメンタルヘルスケアの現状と展望.....油井邦雄
1 ライフサイクルからみたメンタルヘルスケアと精神科臨床
女性のためのライフサイクル論.....加茂登志子 
 1-1 
思春期の性とアイデンティティ
現代の性意識と性行動......北村邦夫
思春期女性患者の臨床.....松下兼宗・青木省三
 1-2 
ジェンダー
ジェンダーという視点からみた女性医療.....海原純子
 1-3
暴力被害
ドメスティックバイオレンス......加茂登志子
 1-4
産業メンタルヘルス
産業メンタルヘルス......大西 守・寺沢英理子
 1-5 
不妊
電話相談から見る不妊の当事者の悩み.....北村邦夫
 1-6
妊娠・出産・育児
周産期のメンタルヘルス.....吉田敬子・山下 洋・岩元澄子
育児ストレス・育児不安.....神庭靖子
 1-7
更年期障害
更年期障害の考え方と取り扱い-婦人科の立場から.....相良洋子
更年期障害の考え方と取り扱い-精神科の立場から.....堀川直史
 1-8
老年期心性
老年期女性のメンタルヘルス.....清水裕美・天野直二
 1-9
アルコール・薬物
アルコール依存症.....白倉克之
薬物依存症.....松本俊彦
2 ホルモンサイクルからみたメンタルヘルスケアと精神科臨床
産婦人科医療と精神医学.....久保春海
 2-1 PMSとPMDD.....松本清一・川瀬良美
 2-2 月経周期と精神疾患.....小森照久
 2-3 精神疾患におけるホルモン療法.....油井邦雄
3 性 差
女性の精神障害の特徴.....林 直樹
コラム●脳の性差.....有坂 治 
4 女性外来とフェミニストカウンセリング
 4-1 女性外来におけるメンタルケア.....対馬ルリ子
 4-2 女性の心理的問題とフェミニストカウンセリングの役割.....遠藤みち恵
5
女性のための向精神薬の処方基礎知識
用法と副作用編.....神谷直樹
代謝と排泄......五味田裕