実践・職場のメンタヘルスー地方自治体と大学との協働ー

著者・編者:大森晶夫/垂水公男 編

判型・価格・発行年: A5判 175頁 本体価格 2,800円 2013年

内容紹介:

 本書は、大学が地方自治体からの要請を受けて行った職員のメンタルヘルス対策の過程と、その成果を記録したものである。

 有給休暇や育児休業などの休業制度の利用しやすさ、メンタルヘルス不調に際しての休職制度の取り扱いなど、一般企業といわゆる公務員ではかなり異なってくる。こうした労働環境の差は、メンタルヘルス対策を考えるにあたっては考慮されるべきであろう。

 大学が実施した職員への調査の中で検討されている「仕事のコントロール感」の有無など、メンタル不全にかかわる要素はどのような職場職種でも共通であると考えられる。また、大学が職員に対して行った実際の講習内容も、不調に陥りやすい性格特性や、職場の雰囲気づくり、不調者の早期発見、傾聴の演習等、個人の努力から周りの取り組みまできめ細やかに網羅されており、経営主体の種別にかかわりなくあらゆる職場で取り入れることのできる、やさしいメンタルヘルステキストとなっている。

 そしてとくに本書を構成するにあたり、一章を割いて書き下ろされた「発達障害者」と「それらしい人」への対応の仕方は非常に具体的かつ現実的であり、企業の人事担当者や管理職だけではなく、学校や職場などで発達障害者(児)が多く見られるようになり対応が苦慮されている現代においては、あらゆる領域や立場の読者にとって有用であろう。


目次:

はじめに
第1章 総論 
1.プロジェクトの背景 
2.プロジェクトの目的
3.プロジェクトの方針,支援計画とスケジュール
4.まとめ
 
 調査編
 
第2章 職場における平均的ストレス度についての調査ー平成21年度ー 
 
1.平成21年度調査のまとめ 
2.正規雇用労働者のメンタルヘルスとジェンダー 
 
第3章 メンタルヘルス不調の関連要因についての調査 ー平成22年度ー 
1.平成22年度調査のまとめ
2.職場のストレスおよび個人の脆弱性とメンタルヘルスの不調
  −ストレス−脆弱性理論の観点からの検討
 
 
 実践編
第4章 実践・職場のメンタルヘルス 職員の不調に気づく
1.職場ストレスの理解と対応−メンタルヘルス不調の予防を目指して
  −一般職・管理職対象−
1)はじめに/ 2)職場ストレスとは?/
3)いつ,どのようにして職場ストレスから心が不健康になるか?/
4)どのような人が職場ストレスをためやすいか?/
5)不健康の予防に向けて/ 6)まとめ
2.職場でみられる精神疾患−ストレス関連疾患の理解と対応 
      −管理職対象−
1)ストレス関連疾患/ 2)精神疾患に対する職場の対応/
3)統合失調症と広汎性発達障害
3.職場における「うつ」−気づき・声かけ・つなぎから職場復帰まで−一般職・管理職対象−
1) うつ病の診断基準(大うつ病エピソード−DSM)/
2) うつ病の症例/ 3)うつ病の原因/
4) うつ病の薬物療法 / 5)うつ病の再発予防/
6) うつ病の発症予防と早期発見・早期対応 /
7) 職場復帰の注意点 / 8)新型うつ病とは /
9) カウンセリングと傾聴 / 10)うつ病と喫煙 
4.早期発見と支援のための面接技術−積極的傾聴法を身につける
  −管理職対象− 
1)なぜ今傾聴なのか / 2)傾聴とは /
3)傾聴の前に / 4)早期発見のための目安/
5)傾聴の実際・演習 
 
 
第5章 職場のなかのちょっと変わった人たち   発達障害とその周辺 
1.発達障害とは何か
1)自閉症スペクトラム障害(ASD)/2)学習障害(LD)/
3)注意欠陥・多動性障害(ADHD)
2.大人の発達障害 
1)成人期の状態像 /
2)医学的診断の有無と成人期の状態像
3.対応や支援のあり方 
1)基本的なこと / 2)職場での対応 …140/
3)専門機関による支援/ 4)ジョブコーチによる支援/
5)発達障害の人たちへのこころのケア 
4.周辺の人たち−診断はされていないけれど,それらしい特性を示す人たちに
   どう関わるべきか
5.まとめ 
 
第6章 大学との協働 
1.職員のメンタル状況に関する実態調査のまとめ 
1) 平成21年度調査 / 2)平成22年度調査 /
3)調査の意義 
2.メンタルヘルス研修会の着眼点 
3.個別相談体制の拡充 
4.おわりに−大学の地域貢献
 
資料1  平成21年度調査票 
資料2  平成22年度調査票